映画「長い散歩」

hitto2009-12-11

今日は朝から激しい雨、横殴りの雨の中、介護士さんの大きな傘に入れてもらい、お爺ちゃんはデイサービスの車に乗って出掛けました。
押し車を車に乗せる作業中(ホンの数秒の間に)びしょ濡れになってしまいました。
介護士さんには、本当に頭が下がります。


緒形拳さん主演の映画「長い散歩」を観ました。
随分前に録画してあったのに、なんとなく後回しになっていました。重い映画なのだろうなと少し構えていたのです。

緒形拳さん演じる安田松太郎、典型的な仕事人間、定年まで真面目に働きそれが家族のためだと信じている、厳格な父親像が目に浮かびます。
娘の万引き、妻のアルコール依存症、これだけで一つのドラマが生まれそうです。
不幸にも妻が亡くなり、娘一人を残して家を出てしまう。
娘は父親の愛情を得ることも出来ないまま、「人殺し・・・」と父親に向かい恨みごとを言ってしまう。


その後、松太郎が家を出てアパートを探し移り住んだことで、とんでもないことに巻き込まれていくのだろうと気が気ではない。


アパートの隣の住人、母親と娘、纏わりつく男、時々聞こえてくる女の子の悲鳴。
5歳の娘が母親に虐待されていることに気付き、ある日女の子をからかう男を襲って女の子を外の世界に連れだすことに。
世間から見れば誘拐に違いないのですが、行き場のない天使(女の子)を救う優しい大人なのでした。


お爺ちゃんと孫ほどに年の違う女の子の二人旅がここから始まります。
登場人物すべての人間が追い詰められていて胸がつまります。
女の子も松太郎に次第に心を開くのですが、途中参加の若者(松田翔太)の笑顔が尚更悲劇を色濃くしてしまいます。


一見幸福そうに見える孫と祖父、若者さえ笑顔が眩しい、誰ひとりその影の苦しみに気付いてやれない。
世間とはそういうものかもしれない。
肩を寄せ合ってこのまま何所かで幸せに暮らせないか、大人の知恵を持ってしても人ひとりの気持を変えさせるのは難しい世の中です。


隣人の不幸に気付いてやるだけの余裕もこちらにはないし、一見幸せそうな家庭には尚更一歩踏み込むことが出来ないのが現実です。
悲しい事件が頻繁に報道されるたび憤りが増すばかりですが、結局映画を見ているのと変わりない傍観者です。


親の身勝手な行動が子供の笑顔を奪ってしまうこと、虐待まで発展しなくとも過去を辿れば余裕のない自分が見えてきて悲しい気持になってしまいました。
深い傷を負った天使(女の子)の行く末がとても気になります。奥田瑛二監督作品。


映画のエンディング、UAの物悲しい声で「傘がない」が流れます。この前、陽水さんがいろんな女性シンガーにカバーしてもらった曲の中で、私は一番マッチしていたと思っていた曲だったので、ここで思いがけず聴けて嬉しかった。