映画「異人たちとの夏」1988年

hitto2012-08-30

異人たちとの夏  1988年 
原作:山田太一  監督:大林宣彦
新潮社によって設立された山本周五郎賞の第1回受賞作品。

山田太一の名作小説を、「時をかける少女」の大林宣彦監督が映画化。妻子と別れて孤独に暮らすシナリオライターが、少年のころ事故で亡くなったはずの両親と過ごす不思議な夏の体験を描く。マンションでひとり暮らし中の原田は、生まれ育った浅草で、死んだ時とまったく変わらない姿の両親に出会う。以来、足しげく浅草に通い出すが、原田の体は次第に衰弱していき、同じマンションに住む恋人に浅草通いを止められる。byNHK


山田太一さんの小説を少し前に読んでいて、NHK BS 山田洋二監督の選んだ日本の名作100選に選ばれていたと知った時には後の祭り、見逃してしまったとガッカリしていたのですが、数日前のお昼に再放送がありまして今度は失敗せずに録画。


映画と原作は、いっそ切り離した方が面白く見られると思います・・実のところ、原作には敵わなかったと思うのは、私の想像力と期待があまりに大きかったから。

亡くなった両親の幽霊と中年男が、親子であることの不思議、両親役の片岡鶴太郎さん、秋吉久美子さんの夫婦が妙にマッチしています。
戸惑いながらその両親に挟まれた主演の風間杜夫さんが、両親の温もりのある雰囲気に包まれ少年だった自分と今を重ねていて、何とも形容しがたい懐かしの我が家に身を置いています。
相手が幽霊なので、現実に生きる風間さんは会うたびに生気が吸い取られるように衰弱するのですが、会っているときはそのままで、帰宅して鏡に映る姿は、目に隈が描かれ・・微妙に笑いを誘うような陳腐さに感じられて無理があると思いました。
映画にするのはとっても難しいところだと思います。


そして小説の中で一番の、おどろ、おどろしいところが最後の場面、恋人の名取裕子さんまでが幽霊だったというオチ。
そこがまた可笑しくて笑うところでは全くないのですが、笑いが込み上げてしまうのでした。


それでも、映画の中は懐かしい昭和の佇まいが充分に感じられて、日本人の心の原風景であるちゃぶ台や、窓を開け放した暑い夏の日などの思い出が一致して気持が落ち着く。
夢でもよいから、こんな風に両親に甘えてみたい。