映画『春との旅』2010年

hitto2015-03-12

この数日間、とにかく寒いです!
暑さ寒さも彼岸までというし、梅が咲いても一度は寒さが返ってくるもの。
昨日一昨日は荒れ狂う強風に(時に突風)時々雪が舞っていました。


昨日は各地で震災の追悼式が行われました。
4年という月日が流れ、短かったようにも感じるし、長かったようにも感じています。
勝手なもので私は、被災地の方から元気な声を聞くと、逆に自分に渇が入ります。

多くの人が家族や友人を失い故郷の悲惨な姿を前に、どれ程打ちのめされたことか、負けるものかと歯を食いしばって生きてきたこの4年間に敬意を抱き静かに祈りを捧げたいと思います。




そんな悪天候で家に閉じこもり映画三昧。
昨年の6月に録画してあったもの。
一年も経ってしまう。


春との旅」2010年と「オーケストラ」フランス映画の2本。


春との旅』2010年
原作・脚本・監督は小林政広


北海道増毛郡増毛町に暮らす元漁師の老人・忠男は妻に先立たれ、同居する孫娘・春の世話がなくてはならない生活を送っていた。だがある日、春は給食づくりの職を廃校によって失い、東京で職を探そうと考える。しかし足の不自由な忠男を一人暮らしさせるわけにもいかず、二人は忠男の身の置き場所を求めて宮城県の各地などに住む親類を訪ねる旅に出る。しかし、これまで身勝手に生きてきた忠男の人生が浮かび上がってくるばかりだった。春は母を自殺で亡くしていたが、最後に母と離婚した父の許を訪ねようと春が提案する。byういき





老人とその孫娘と思える子が、古びた家の扉を開け争いながら道路に飛び出し、老人は杖を放り投げその孫が拾うもまた捨てる老人に娘はホトホト困った様子で、始めに何があったのかの説明は何もない。


北海道、増毛の駅から旅が始まる。

そして増毛で終わる。


毛が増すって地名で有名になったところだ。

海岸線の綺麗なところで私は2度くらいこの地を通っている。




まず大御所揃いのキャストに驚かされる。
演技については文句の言いようもない。
掛け合いが面白く、もっとずっと観ていたいような気にさせます。



仲代達矢 徳永えり 大滝秀治 菅井きん 小林薫 田中裕子 淡島千景 柄本明 美保純 戸田菜穂 香川照之ほか・・ねえ、凄いでしょ。



徳永えりさんは、「梅ちゃん先生」の一番の親人だった女医さん。

歩く恰好からして役に徹していたので、梅ちゃん先生の時とはまるで印象が違いました。

ただ、あの目力は映画の中で凄く生きていた。



純和風の筋というか、遠い昔どこかで似たものを見た気がするし、訪ね歩いた兄弟の反応は大凡の見当はついていたけれど、目に見えない血の繋がり情の深さにホロリと泣かされるところも。



主演の仲代達矢さんは頑固者で実の兄弟からは、死ぬまで自分のことばかり考えているような大バカ者・・と、姉からも言われている。

それが自殺した娘の別れた夫(孫娘の実父)に会ったところから、全く違う面が現れ、心優しい老人というか、内には強く厳しく、反面外面の良い内弁慶って人は要るんだろうが、それまでの勢いが強かっただけに極端に情けなく思った。



どちらにしても、切羽詰まった行動(旅)と読むこともできるし、鼻っから自分の面倒をみてもらおうだなんて考えてはいなかったと思う。

その現実を孫である春に見てもらうためのものだったか、それでも孫に甘え過ぎって気はする。



劇中に出てくる「俺をここに捨てていく気か、野たれ死ねってことだな」なんて、怒鳴ったりするのだが、その覚悟のある老人なら一人で何とかできる。

観終わって思うのは、単に疎遠になっていた兄弟と会うのが目的だったとも思う。

最後に電車内で倒れ亡くなるというのは、ちょっとやり過ぎた感じがした。




映像はところどころハンディカメラを持って映しているようなところがあって、画面が小刻みに揺れドキュメンタリーのような映画やドラマにはちょっとない斬新な緊張感を醸し出しているのだが、取り立てて効果があったとは私には思えない、若い監督さんなのかな。



親戚を訪ね歩くうちに、春は兄弟に会うお爺ちゃんを羨ましく思い、何年も会っていなかった実父の家を訪ねるのだけれど、そこでの春と父親の二人のシーンは泣かされました。


これって、どんなにか辛いシーンだろうか、兄弟なら別れて暮らすのは極普通のことだと思うけれど、別れたくて別れて暮らしていたわけではない父と娘、胸が詰まるし、泣く娘の肩を寄せ絶妙のタイミングで抱くところでもう私はぼろぼろと涙が出てしまった。


こんなにも大御所がいる中で香川照之さんの動きだけの演技が最高でした、声を張り上げるところがなかったからこそ香川さんの演技が光り、一番印象に残ったのかもしれない。



父の家を去り、春に逞しさが備わったのか決心が付いたという感じ。

これからの暮らし、お爺ちゃんを自分が支えるという覚悟、もうこれでおしまいが良かったなあ。


「オーケストラ!」の感想が・・次回にでも。