映画「パンドラの箱」2008年

hitto2009-10-30

快晴、明日のために今日がんばろう!
小休止・・・が、大休止。
昨日の映画「パンドラの箱」を観た感想だけ。
NHKアジア・フィルム・フェスティバル「パンドラの箱」2008年・トルコ/フランス/ドイツ/ベルギー
遥かなるクルディスタン」や「雲が出るまで」などの作品が各国で高く評価されているトルコの女性監督イェシム・ウスタオウルが描いた人間ドラマ。母親が認知症と診断された三人の姉弟。それぞれに独立し、親しく行き来することもなくなっていた彼らだが、母親の介護問題をきっかけに自分たちの人生を見つめ直す・・・。姉弟たちが直面する苦悩やかっとうを通じ、人間としての在り方を強く問いかけた感動作。

<作品情報> 
(原題:PANDORA‘S BOX)
〔監督・脚本〕イェシム・ウスタオウル
〔脚本〕セルマ・カイグスズ
〔撮影〕ジャック・べス
〔音楽〕ジャン・ピエール・マス
〔出演〕ツィラ・シェルトン、ダリヤ・アラボラ、オヌル・ウンサル ほかbyNHK


重たいテーマの映画でした。
2008年のサン・セバスチャン映画祭で最優秀作品賞。そして最優秀女優賞に輝いたツィラ・シェルトンさんは御歳90歳、真に迫る演技には脱帽です。


トルコ語のセリフを覚えて出演されたというだけでも尊敬です、全く凄いことです。
トルコは若い人の多い国ですが、それでも高齢者の介護、伝統の軽視など、どこの国でもあるような問題を抱えていると監督のイェシム・ウスタオウルさんが話されていました。


過去の絆を断ち切り、育った故郷を忘れたかった子供たち、母親一人を残し都会でそれぞれ生活をしています。母親がアルツハイマーのために行方不明となるまでは。


3人の子供達は顔を揃え故郷へ帰ります。
長女が運転する車に次女と弟、狭い車内で激しい口論の応酬、子供のころの悲しい記憶が蘇ったかのように、それだけで観るのは辛い映画だとわかります。
アルツハイマーになった母親を都会に住む長女の家に連れて帰りますが、案の定母親に手を焼いてしまいます。


長女は次女に向かい「母さんはあなたが世話をして」と、次女は次女で「私の生活は不規則だから」と。
「病院に入れよう」と次女が言えば、長女は「親を捨てたと思われるから・・・」


解決の糸口があるのだろうか・・・と。
日本では、もう病院や施設に入れることになっても、そんなことを言う人は少なくなったと思います。介護施設がどんなものか、プロの介護士さんにお任せする方が良い場合だってあります。
日本は、介護施設は足りないのが現状で、社会問題になっているくらいだから、そのことが少しずつ理解されて来ている。


けれど、子供である自分が親の世話をできないことは、世話をするのと同じくらい辛いことだと思います。
自分が放棄した、別の方法がなかったかと、いつまでも自分を責めてしまうからだと思います。
自責の念にかられ、頭から離れないのです。
母親は、いままでおひとりさまの老後を楽しんでいたのかもしれない。
本当に考えさせられる映画。


唯一母親と長女の息子(孫)との交流が穏やかに描かれていました、まるで恋人同士のように食事をし、町を歩き景色を眺める、この景色が最高です、絵葉書や絵画を見るように魅了されてしまいます。病の中でも母親は時々正気に返り娘や息子に諭すように声を掛ける、言葉が少ない分、言葉の重みが充分伝わってきます。
きっと3人の子供達たちはそれまでの自分を見つめ直すきっかけとなったのでしょう。
母親は偉大です。