映画「華の乱」1988年

hitto2012-05-02

連休、二日間だけの平日は雨風激しく、窓さえ開けられません。
間の休みは洗濯物が多いのに。


ここのところ映画つづき、新番組は今のところ「37歳で医者になった僕」と「カエルの王女さま」「ATARU(アタル)」全く違う趣向で面白い。


昨日観たのは、「華の乱」。

『華の乱』(はなのらん)は、1988年に公開された東映配給の日本映画。永畑道子の小説『華の乱』『夢のかけ橋』を原作とし、深作欣二が撮った劇映画。原作に倣い、主人公・与謝野晶子の視点から大正時代の社会運動、芸術運動の群像を描いている。激動の、そして革命期でもある明治、大正。与謝野晶子吉永小百合)は、愛、芸術、社会運動に命を燃やし、それぞれの目標へ行こうと必死に生き、花のように散っていく文化人たちに出会い、関東大震災の廃墟、そして大正を乗り越え、夫、寛(緒形拳)とともに生きた。・・・byうぃき

主役は吉永小百合さん。
どの角度からでも非の打ち所のない美しさを見せています。


それに思いもしなかった濡れ場があるわ、タバコをくわえながらの執筆活動やら、子供たちと取っ組み合いの場面があったり・・と、兎に角女優として、この映画に対する思い入れを強く感じ取れました。
これまでの私の中で、小百合さんのイメージになかった部分なので、それに体当たりしているシーンに凄く驚きました。


しかし、この映画に出演している俳優さんの誰もが主役級の役者さんたちで、それぞれの個性が素晴らしく、強烈に印象に残ります。
大凡25年前の映画で、当時として輝いている役者さんたちを贅沢に配役され、深作欣二監督は如何に役者さんたちの持ち味を生かしつつ撮影・製作したのではと、多分相当なプレッシャーがあったのではないかと思ったりします。


吉永小百合さん、緒形拳さん、松田優作さん、松坂慶子さん、池上季実子さん、石田えりさん、風間杜夫さん、と揃いも揃って凄いでしょ。

しかも若々しくエネルギッシュ・・あたりまえですが。
ミスキャストと思う人がいるかも知れませんが、与謝野晶子さんの生きた大正の佇まいを感じるだけでも観た価値はあるなと思いました。

映画の時間枠では消化しきれない部分があることも、この盛りだくさんの内容ではしかたのないことかと思いました。
重要な流れは何となく掴めたかなという感じです。

それにしても、与謝野晶子という女性のバイタリティさには圧倒されどうしでした。
恋に落ち、不倫相手の家に押しかけるわ、子沢山の母親にはなるわ、子供たちをおいて再び不倫に走るわ、自由奔放とはいけない時代に、まるで後先を考えずに突っ走る自由人のような振る舞いでした。
そこに至るまでには尋常には考え難い現実の悩みを幾つも抱えており、家庭のやりくりに夫の不甲斐なさとか、それに子供を抱えながらの職業婦人と、色々あるのだけれど、その過程の我慢強さとかは明治生まれの気概なのかもしれません。


緒形拳さんのダメッぷり亭主も味があるというか、どこか憎めない。
夫婦としては、どっちもどっちという似たもの夫婦、お互いシガラミを抱えながら最大限に羽目を外し、いわば不倫も公然となっている。
最終的には関東大震災に合い、家族として一からの出直しという設定でした。


有島武郎を演じた松田優作さんのお顔を拝見できたのも良かった。
はまり役という感じはしなかったけれど、不倫相手の危険な香りを十分に感じました。
はまり役といえば、波多野秋子役の池上季実子さん。
記者という立場の知的な物言いや、心中に向かわせる陰のある雰囲気とか、回りを狂わせるような行動とか抜群でした。


松井須磨子役の松坂慶子さんもフレッシュで生き生きと演じていました。
蒲田行進曲の後なのか・・石橋蓮司さんとの掛け合いには凄みがあります。
近頃の松坂さんには、とても考えられない迫力で再認識した感じでいます。
今朝も再放送「ゲゲゲの女房」BSに出演していましたが、ヘタになってません?セリフを置くような感じで、往年の達者さがまるで感じ取れないです。


感動を与える芸術や文学とは、極限状態の激しい感情から生まれるものなのかもしれません。