「潜水服は蝶の夢を見る」2007仏・米映画

hitto2012-11-22

先週でしたか、先々週だったか、「潜水服は蝶の夢を見る」という映画を観ていました。
この映画の感想を書き残しておこうと思いながら遂には忘れてしまい、こんなにも日が過ぎてしまいました。
こんな風に日々やり残したことが多々ありそうな毎日です。

一日一日ごとに寒さが増してきましたが、一日2リットルの水分補給、ラジオ体操第一・第2、腹筋20回と、一日の決まりごとを増やしました。




潜水服は蝶の夢を見る(2007年 フランス・アメリカ)
世界最大手のファッション誌『ELLE誌』の編集長であるジャン=ドミニク・ボビーは、ある日、長男を乗せて新車を試乗中脳溢血に襲われたが、 一命を取り留め、リハビリのためパリから北部海岸の街ベルク(Berck)の療養所へと移床される。
3週間におよぶ昏睡の後、意識と記憶は回復し、音は聞こえるが、言葉を発することはできず、全身に亘っての重度の麻痺が残った、閉じこめ症候群(Locked-In syndrome)の状態になってしまった。
全身の運動機能を完全に失ってしまった現在、唯一動かせたのは左目のまぶたのみだった。
絶望の後、彼は、左目のまばたきのみで、自伝を書くことを決意する・・・byういき


すぐに気付かされますが、カメラの視点がこの映画の主人公の視覚でした。
唯一残された身体的機能が、その狭い視覚だということに大変ショックを受けます。
主人公自身の心の声が時に虚しく、時に激しく、時に甘く、忍耐強く聞こえてくる。


主人公、ジャン=ドミニク・ボビー(ジャン・ドー)は実在したフランス版ELLE誌の名編集長で43歳のときに突然脳梗塞になり全身麻痺状態になったそうです。
ただ左の眼球だけが動き、瞬きの数でイエス、ノーを示し意志の疎通を図り、遂には本まで出版したという、この世の奇蹟のような映画でした。


フランス映画という先入観か、洒落ていてそしてスマートで、病気の重々しさや卑屈さなどが感じられず、センスの良い語り口に一々納得しながら時々笑える場面もありました。

そして彼を支える回りの人々、人としての尊厳を守り愛情に応える豊かさや優しさを教えられた気持になりました。


一番に苦しんでいるのは本人に違いはなく、同じ脳梗塞で倒れた(私の)実父のことを思わずにはいられませんでした。
父親は片言でも言葉を発することが出来たから、病状としてはまだ救われていました。
残念なのは、どこまで理解できているのかということを私に誰も教えてはくれなかったということ。

私を覚えている、それだけを確認してバイバイと言って病室を後にしていました。
何もかも分かっていると本心から思っていたら、もっと違う話し方ができたかもしれないのに・・と、後悔したって仕方がないですが。

この映画のタイトル「潜水服は蝶の夢を見る」と聞いて、意味がさっぱり分からず鑑賞し始めたのですが・・観終わってみると、なるほど、そうかと「蝶のように自由に舞い、記憶と想像力だけで、自分は潜水服を脱いでどこへでも行ける」といった意味だったのか・・あの映像とこの言葉がフラッシュバックする感覚が残っています。


記憶を辿り執筆されたジャン=ドミニク・ボビーさんの本をいつかは読んでみたいと思いました。