おじいちゃんは、不死身やで

2日の日はおじいちゃんが一日調子が悪かったので、主人が帰って来てから、病院へ一緒に連れていった。
その日は丁度、K先生(おじいちゃんのかかりつけの先生)の当直と知っていたので、電話連絡を入れてから、診察をお願いした。
急患の人が何人かいたが、30分程待たされて、呼ばれた。
呼吸の荒いこと、頭痛と、微熱がある事を話して、すぐにレントゲン、心電図、採血と検査をして貰い結果が分かるまで、1時間程待たされた。
時間が8時を回っている事もあって、いつもの外来患者で ごった返しになっているわけでは無かったが、廊下の風通しが良いこともあって、寒かった。
おじいちゃんと2人で検査の結果を聞いて、その話だけで充分、愕然としていた。

「すぐに入院。肺に水が溜まっています、これは重傷ですよ」
おじいちゃんは半ば、信じられない様子で話を聞いていた。
「20メートル歩いて、息が荒いのは重傷でしょう」と念を押され、
「入院の準備も出来ていないし、明日にして下さい」と食い下がるおじいちゃんの言葉も空しく、入院の手配を進めた。
肺のレントゲン写真は、素人でも分かるくらい、左の肺の下半分が白い煙に巻かれているように写っていた。その煙は上部に届く程に広がっていて、これが水なら苦しいに違いないと誰でも判断がつきそうだった。
二人で説明を聞いている間はそれでも、治療しだいで完治するものだと思っていたので、先生の落胆振りには気が付かなかった。

入院のベッドの準備が出来次第 廊下で待つ様に言われ、主人に「肺に水が溜まっているんだって、このまま入院だって」と説明をするかしないかで、K先生に家族の方だけと言われ、今度は、主人と2人で診察室に入った。
レントゲンの写真を前に先生は第一声、「肺ガンだと思います」
肺に水が溜まっているという事は既に、肺の粘膜?全体に転移が考えられ、手術する事は無理です。
「と、これが多分癌です。」と肺の左上部を指さし説明した。手術が無理ってどういう事?
更に、精密検査が必要で、連休明けに行う事。
癌治療は現時点では放射線を当てるくらいで、後の治療は無く、痛みを和らげる事しか出来ないとはっきり言った。
いったん治療が終わった後は在宅療養になるので、本人に告知するべきか良く考えて欲しいとも言っていた。
気の弱いおじいちゃんなので告知は酷だと、反射的に思ったが、後々、治療や、良くならない状況で不満が増す事を考えると、本人の納得出来る告知に踏み切るしかないのかも。

だけど、毎月検診に行っていながら、レントゲン検査が無かったのが悔やまれて仕方がない。
ただ最後まで病院が受け入れてくれる様お願いしておいた。
いったん退院して、自宅療養に成るだろうが、本当に大変なのはその辺でのケアだと思うが、皆目見当が付かない。
歳も歳だが、どの位の進行でどのくらい生きられるのか。
頭の中はパニック状態でその夜は布団に入ってもなかなか寝付けないでいた。

「おじいちゃんは、心筋梗塞でも助かったし、不死身やで。」と言う子供の言葉に涙が出た。


普通、最初の診察段階で、癌だと知らせるのだろうか?
それとも、余程、確信があったという事か。
精密検査の後でいいのでは。
ガン細胞を発見してからでも良かったのでは。
血液検査で分かったのだろうか?

いずれにしても、この休みの間にネットで調べたりして、随分勉強出来たのは良かったが。
精密検査の後の説明は、もう少し状況を飲み込めると思う。