たかが音楽 いつでも やめられる

hitto2010-01-09

昨日の夕刊(読売新聞)を開くと紙面上部に「たかが音楽 いつでも やめられる」と力強い書が目に飛び込んできました。
どこかで聞いたことのあるフレーズです。写真は、さだまさしさん・・・そうです、これはポール・サイモンの有名なお言葉・・・って、巷では、さだまさしさんとポールとの有名なエピソード(この言葉の真意を聞くために、ポールに会いに行ったという)何かに書かれていて読んだ記憶があったのですが、本当の話だったんだ。


憧れの米国人音楽家ポール・サイモンのインタビュー記事が載ってるぞ、と大喜びで手に取った雑誌をめくっていて、一本の小見出しに目がくぎ付けになった。
「たかが音楽、いつでもやめられる」
中学生の時に彼のギターの魅力にとりつかれて以来、一生懸命追いかけてきたのに―。真意をただそうと、レコード会社の仲介でニューヨークまで飛んだ。「関白宣言」が大ヒットした1979年、27歳の時だ。
ヤンキースの帽子をかぶったサイモンは言った・
「マサシ、音楽は常に過去に向かって進行しているものなんだ」
この一言で腑に落ちた。音楽は、生み出された瞬間に終わっている。たとえばライブで生まれた音は、そこで終わり、聴衆の記憶だけに残っていく。そう説いてくれたサイモンは、「いつでもやめられる」ぐらい、日々の創作に打ち込む情熱家だった。「たかが音楽」は、斜に構えた表現だったんだな、とも感じた。
サイモンは当時、自伝的要素が濃い映画「ワン・トリック・ポニー」の制作・主演に没頭していた。作中で彼は、主人公JONAHを演じ、その名を冠したスローで美しい曲を歌った。が、この映画制作で彼は巨額の借金を抱えた。
自身は、中国大陸を流れる大河を撮ったドキュメンタリー大作「長江」を81年に完成させた。映画は大ヒットしたが、製作費がかかり過ぎ、膨大な借金を背負った。不思議なくらい2人の人生航路は重なり合った。
感動の出会いからおよそ20年後。デビュー25周年記念アルバム「季節の栖(ときのすみか)」には、サイモンから特別に許可をもらって、「JONAH」を収録した。「マサシが日本語で新しい詞をつけてくれ」との伝言があったので、「JONAH」は、女性を主人公にした切ない恋の歌に生まれ変わった。
自分が詞をつけた「JONAH」を聴き返し、「過去に向かう」を、借金に悩みあえいだ日々を思い出す。「いつでもやめられる」という言葉が、折れそうになる心を支えた。
「ポケットの小銭にいたるまで、体の中に持っているものは全部ステージに置いてくる」。そんな覚悟で歌い続けるうち、利子を含め総額35億円の借金を2年前に完済した。ライブは昨年末までに3700回を超え、ソロコンサートの日本最多記録を更新中だ
。(読売新聞 文化部 藤原義晴さん)