映画「母べい」2007年

hitto2010-02-04

朝日のあたる障子にくっきりとした柱の黒い影が写っていて、白い光と影がうつくしい。
ドアを一歩出るとひんやりとした空気が全身を覆う、外は思っていたよりも寒いです。


毎朝食後に飲んでいる錠剤のくすりを昨日今日と連日床に落としてしまう。
指の感覚が鈍くなったのか、寒さで指先がかじかんで(凍えて)いるのか・・若い頃なら落としたところで何とも思わなかったと思う。

時々お爺ちゃんの炬燵の下に落ちている小さな錠剤を見つけることがあって、多分落ちたくすりを探すのだって(お爺ちゃんには)難しくなっている・・とか、老いのせいにしていたり・・そんなことを急に思いだして、私も同じこと・・そう思うと自分が情けなくなってしまいました。

5mm程の小さな錠剤は落としやすいし、下に落してしまうと小さいので見つけるのも難しい、何も老いのせいばかりではないと思ってみる。
けれど、指先の動きは加齢によって鈍くなることは料理をしていても感じているし、その上、視力もどんどん低下している・・所謂老眼。
こんなやっかいな老化現象を少しずつ体験しては何食わぬ顔をしてやり過ごしていくのだ。


昨日観た映画「母べい」
「母べい」2007年度 日本映画
監督   山田洋二
出演   吉永小百合
     浅野忠信   坂東三津五郎   笑福亭鶴瓶
     志田未来   佐藤未来
原作   野上照代


1940年、昭和15年・・翌年の12月8日が日本開戦の日だった。
そんな社会情勢の不安な頃の生活を山田監督流にほのぼのと見せてくれている。
苦しい時、悲しい時、全く笑っている場合じゃないのに、笑わずにはいられない、些細な笑いをところどころに散りばめているのは流石です。
深刻な状況にいる時ほど、些細な笑いが不思議に優しく心に沁みてくるものです。


ラジオのニュースでは、真珠湾アメリカ軍基地を日本が奇襲攻撃したと、いよいよ開戦。その年に・・ニューヨークの片隅では、サイモン&ガーファンクルの二人が産声をあげたんだ・・なんて(全く関係ないところで思い出してしまう)、日本、アメリカ、どちらにしても不幸な時代だったのだと思う。


映画では戦争という家族に及ぶ直接の被害などは描かれていない、殆どが家庭内(家族間)で起きているやり取りで、野上佳代(吉永小百合)を中心に野上家の生活が描かれている。

吉永小百合さんが演じるだけで画面がこの時代背景にして華やかに見えるのは、小百合さんのオーラのようなものかなと、思います。
夫の滋(坂東三津五郎)が、治安維持法違反で逮捕され、生活が一変。滋の教え子だった山さん((浅野忠信)がこの家の中に無くてはならない存在になっていくのを少し複雑な気持ちで見ていました。
スッキリと小百合さんの義理の妹(檀れい)と結ばれるような展開だと良かったのに・・と、私的には残念な感じでいました。