「予感 」 2007年・イラン

hitto2010-03-12

昨日観た映画の1本、今日はゆっくり感想を。
「予感 」 2007年・イラン/日本 HIDDEN FEELINGS
イランの首都テヘランを舞台に、冷えきった夫婦関係に苦悩する中産階級の男女と、彼らをめぐって交錯する複雑な人間模様を描いたヒューマン・ドラマ。広告会社を営むアミールは、ある日、若く魅力的な女性ネダと出会う。精神科医として働くそうめいな妻シミンとの生活を捨てて、ネダとの愛に生きようとするアミールだが・・・。ヨーロッパを中心にドキュメンタリーの監督として活躍してきたキャリミ監督の劇映画デビュー作品。
<作品情報> 
(原題:HIDDEN FEELINGS)
〔監督〕モスタファ・R・キャリミ
〔出演〕モハマド・レザ・フルタン、マータブ・ケラマティ、ハーメド・ベーダド、ニユシャ・ゼイガミー ほか・・・byNHK

この前観た「桜桃の味」1997年のイラン映画とは全く違った角度で映された風景。
そこには暮らしが有り、しかもその暮らしがとても豊かです。
丁度「桜桃の味」から10年後の製作でした。


上流階級らしく部屋の内部も近代化されていて暮らし良さそう、なのにこの映画は、夫婦間に亀裂の入った冷たさをそのまま画面に映しているようで、無機質な感じがするし、素っ気ない二人の関係のように受けてしまう。
女性はチャドルと言うらしいが頭にスカーフ、ゆったりしたラインの黒っぽい衣装で、知的でスッキリさせていて素適だった。


この映画に登場する女性にはピーンと張りつめた美しさがあって目を見張る。
チャドルに対してどこか女性が男性社会に仰圧されたようなイメージもあるけれど、女性の頭に巻いているスカーフのようなものが、付けている人の個性に合っていて、それに色もとりどりに工夫され凄く似合っていて、私なんかはちょっと憧れる。
それに無頓着な私には癖毛の乱れ髪を隠すのにうってつけなものかもと・・そのことに気を取られるのもどうかと思うが。


ここにあるお話は、どこにでもあるような夫婦の物語、夫の不倫という、ありふれた内容でした。
会社を経営する男と精神科医の妻、過去の辛い経験から子供はいらないと妻が言う。
夫婦の思いがすれ違う、男は写真家の若い女性に出会い次第に惹かれてしまう。
若い女性には心を病む兄がいて、兄は妹に依存することが多かった。
男は若い女性の大切な相談役にもなっていたので、恋愛関係になるのに時間はかからなかった。


ある日男が部屋を離れたすきに男の携帯が鳴り響き、夫の携帯電話を手に取った妻は、瞬間に女の感というか夫の浮気に気付いてしまう。よくあるパターンですが。
不倫相手の女性の兄が、今にも何か起こしそうでとても恐い。
そうそう、浮気男の趣味も変わっていて、ストレス発散に車で砂漠の中をまっしぐらに爆走させるという・・何かあったら、どうするの?というくらい猛スピード。
それに女性の兄を精神科医である妻に紹介する、って、そんなことするかな?わざわざ糸が縺れるようなこと。


興味のある結末は、何か起こしそうな若い女性の兄が、怒りを露にして男に降り掛かろうとする・・が・・・ベランダの柵を破り転落とは・・・少しばかり後味の悪さを感じさせますが、筋とは別に近代化に向かっていくイランの暮らしをこの映画で観られたのは大変良かったかな・・と思いました。